新年度

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「……ッ! スイッチ!」 ヴラドの爪の一撃を両手剣で受け流し、攻撃を捌き切ったグレイヴが叫ぶ。 次の瞬間彼の背後で待機していた前線組のプレイヤーが応と叫び返しながらヴラドのクロスレンジに飛び込み、浅葱色のライトエフェクトを纏わせたカトラスを閃かせた。 カトラス使いの連撃がヴラドの腕を覆う甲殻を斬りつけている間グレイヴはその場を離脱し、これによりウチのパーティーのメンバー全員が戦線を一時離脱した。 「クソ……欲を言えばもう少しダメージ稼ぎたかったな……」 「そう言うなって。欲張り過ぎて足踏み外しちゃ世話ないだろ? いざとなったらウチのリーサルウェポン達が吹っ飛ばしてくれるって」 「私達今回はあんまり目立つわけにはいかないんですけど……」 「ライさん、私はともかくライさんに関してはもう半分以上手遅れですよ」 「……そんなこと……ないもん……」 与ダメージ量に微妙に未練がありそうなグレイヴをレインとともに宥めつつ、サボっていると後で文句を言われない程度に適当に戦線のプレイヤーに対しバフを飛ばす。 ついでにプレイヤー達の剣が届かない頭を狙って攻撃魔法を飛ばしてじわじわとHPを削るのも忘れない。 ボス戦におけるMVPは与ダメージ量や貢献度をゲームシステムが総合的に判断して付与されるので、前線組が貢献度を稼ぐ余地を削っていけば現時点でかなりの与ダメージの割合を稼いでいるこのパーティーの誰かが獲得できる可能性が上がるのだ。 前線組とスイッチした時点でヴラドのHPバーは二段目があと少しで半分といったところまで減らせていたので、カーミラを一パーティーで倒した+ヴラドへのダメージ量を考慮すると現時点でかなりの割合の与ダメージ量をこのパーティーで独占している。 前線組はメンバーの母数が多いだけに貢献度は分散しがちだし、次のオーラ解除とフルアタックの成果次第ではMVP確定も十分狙えるだろう。
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