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ファンデーションは、私の肌より一段階明るい。元からこの子は、私より肌が透き通るように白かったもんね。
桃色のチーク。頬の少し内側を弧を描くように撫でて塗ると、小顔効果がある。なんて、元から小顔のこの子に必要はないと思う。
バッシバシの付け睫毛。こんな付け睫毛なんてしなくても、可愛いのに。
アイシャドウはローズピンク、下地は緑色のクリーム。アイラインはほとんどしないのか、新品同様に転がっていた。
可愛い女の子の化粧道具の中身は、その子に本当に必要かと疑問に思うほど多い。その上、色んな色を揃えるせいで、荷物は更にかさむ。
「ねえ、莉緒。莉緒、人のベットにカバンの中身をぶちまけないでよ」
「ごめーん。でも今、動いたら私の中身がぶちまけそう」
「動かないでよっ」
私も帰宅したスーツのまま、急いでキッチンの上の戸棚からボウルを取り出し、スーパーの袋をひっかけると、莉緒の元へ走る。
「うー。駄目だ。カシスオレンジ一杯のつもりが、日本酒美味しくて」
「いいから、それ持ってトイレに行ってきて」
「ほんと、ごめんね、茉優(まゆ)」
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