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「綾瀬様、四日間お疲れさまでした。イベントのご成功、心よりお祝い申し上げます」
波乱の最終日がお開きになり、私は控室で片づけに入っている綾瀬花音の元にお祝いを述べに訪れた。
陰ではいろいろとトラブルがあったものの、表向きには大成功のうちに終わった。これだけの客を集められる彼女のカリスマ性は素晴らしい。彼女に述べた言葉に偽りはなく、私は心からの賛辞を送った。
彼女はまだあでやかな着物姿のままだった。さすがにほっとしたらしく、「ありがとう」と答えて紺色のスーツに戻った私に微笑みかけた。
「今夜はイベントの成功をお祝いしてもらうことになってるの。鷹取部長にね」
私の笑顔が凍りついた。そんなことは彼から聞いていない。
でも、今までだって接待先を教えてもらったこともなかったし、いつものことと言えばそうだ。
でも、今夜は家でゆっくり話がしたかった。
最後ぐらいは……。
「彼とは今後の話をすることになっているの。絶対に逃せないわ。なんたって彼は橘ホテルの後継者ですものね」
私は殴られたような衝撃を受けていた。綾瀬花音は、彼が社長の実子だということを知っている──。私には教えてもらえなかったそれを、彼女は教えられていたという事実。
息もできずにいる私を残し、彼女は立ち上がった。
「今回はいろいろとありがとう。片づけはあとでうちの社員がやるわ」
私は頭を下げるのも忘れ、ドアが閉まる音をただ聞いていた。
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