伍章 三匹の神使 中編

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 項垂れるように頷く。  伊三郎はいつもふくりにその話を聞かせていた。  ふくりは手合わせで一度もみくりと仁吉に勝ったことがない。 むしろ、反撃をすることもなく負けて終わることが多かった。力を使って争うことに抵抗があったのだ。  とぼとぼと社頭を横切り、手水舎の影に隠れたふくりは体に顔を埋めて丸まった。  いつも伊三郎に呼びだされた時は、決まって気持ちを立て直すまでどこかに隠れていた。  ────このままでは神使が務まらないということは重々承知している。  しかし、どうしても自分が出した狐火を、ふくりや仁吉に向けて放つことができないのだ。いずれはそれを同胞に向けることになるかもしれないと思うと、余計に委縮してしまい何もできなくなくなるのだ。  弱い自分に嫌気がさす。情けなくて惨めだった。  深い溜息を吐く。目頭がじわじわと熱くなった。
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