No. 2 -水底に沈む-

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 時刻は午前7時ちょっと過ぎ。  僕はのどか姉ちゃんの身支度ができるのを待ちながら、飼っている金魚に餌をやる。  朝ごはんを食べて登校するまでの間、僕はこれが毎日の日課になっている。  別にこの金魚を愛しているからとかじゃなくて、女の子の身支度は時間がかかるのって姉ちゃんが言うから、暇を持てあまして相手をしているだけだ。  こいつを買ってきたのは、確か二年前だから…小学6年の夏祭りの時だ。姉ちゃんが金魚すくいやろうよって言ってきて、僕だけが一匹捕まえることができた。あの時は小さくて可愛らしいと思ったけど、二年経った今では不細工になったなぁとつくづく見てて思う。 「今日も一段と長いの出してるのな、お前。」  金魚は自分の体長以上はある長さの糞を引き連れながら涼しい顔で泳いでる。一体あのお腹の中にどうしてあれだけの量が入ってるのか気になるけど、いずれにせよ生理現象とはいえ見ていて気持ちのいいものじゃない。かといって手で触って引きちぎるなんて、死んでもごめんだ。  見たくもないし、触れたくもない。一辺の価値すらない、まさに汚物そのもの。まるで…
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