素敵な中二病

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昼間に熱を撒き散らしていた太陽が沈む準備を始める頃、リーリーと虫の鳴く声が響いて来た。多分に湿気を含んだ空気が肌に纏わり付く。砂の地面に蝉の死骸が落ちている。 いつもより少し足を伸ばしてこの公園にやって来た甲斐があったというものだ。スマホのとあるゲームアプリで、お目当のモンスターをゲットできたことにほくそ笑む。スマホをバッグにしまい、自転車のスタンドを上げる。 中学に入って初めての夏休みも残りわずか。全ての宿題を片付けて、今日は一日心置きなくモンスターを探していた。……本当はタピオカミルクティーでも探しに行った方が女の子らしいかもしれないが。流行りものに飛び付く同級生を冷めた目で見ている自覚はある。 いけない。こういう「自分は周りとは違うんです、特別な人間なんです感」って、いわゆる中二病なのではないか。冷静になり頭の中を整理していると、公園の入口の方からこちらにまっすぐ走ってくる人影がある。制服を着た女の子だ。あの制服はたしか近所の高校のものだったと思う。
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