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「姉さん、こっち押さえてるから。そっち広げて」
美沙子と一緒にシートを広げ、舞い散る桜の下でゆったりと腰を下ろしました。
「あぁ。綺麗ねぇ、ここ。わんちゃんも毎日この景色の中で走り回れるなんて幸せね」
私たちの座るシートのすぐそばに伏せをした状態で、ふんふんと鼻を持ち上げて草花を嗅ぐタロウを見て言いました。
「タロウっていうの。穏やかな子だから、触っても平気よ。はい、これ。口に合うと良いのだけど・・・」
「えっ・・・わぁ!シナモンロールじゃない!姉さんが焼いたの?」
私が頷くと「良い香り!いただきます」と、まだほんのりと温かいシナモンロールにかぶり付きました。
私は、頬を膨らませて「美味しい」と喜んでくれた美沙子を見て、肩の力が抜けるような感覚になりました。
「これ、ローズヒップティーなの。はちみつあるから、好きなだけ入れてね」
「レジャーシートの上で、ティーカップなんて中々無いわよね。面白い」
「ふふっ。そうね。おうちの前だから出来るのよ。割れちゃったりしたら大変だもの」
どこかで、だけどそう遠くない場所から、ウグイスが「ホーホケキョ」と鳴いています。
キュイッキュイッと鳴く鳥達が、パタパタと桜の木から飛び立ち、
時折ふわりと丘を吹き抜ける風に、はらはらと散る桜はお日様の光に反射して、まるで雪が舞っているよう。
頭上には、薄桃色の桜が生い茂り、隙間からは水色の空が見え、とても爽やかで美しいのです。
村を囲む山々も緑が映え、私たちの周りにも、赤紫色のカラスノエンドウやタンポポが彩りを添えてくれていました。
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