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「Aさんに触れたいと思う?」
「……思い、ます」
思うけれど、告白をされた後にこう思うようになったということは、俺はエヴァンが好きなんじゃなくて、好きだと言ってくれる人を好きなんじゃないか? とエヴァンの名前を伏せて従兄弟に言う。
「俺には謙吾がAさんのことを好きなようにしか思えないけどなあ。たぶんAさんは、謙吾に意識してもらうために告白したんだよ。目的は想いが通じることよりも、まず好きになってもらうことだったんだ。だから、告白された後に好きになったとか、そういうの気にしなくていいんじゃないかな。その人はそれを望んでいたんだから」
従兄弟の声が耳を通って頭の中に染み込む。気がつけば心がすっきりとして、軽くなっていた。
「そうなのかな」
「うん、きっとそうだよ。けっきょく、その人のことが好きなのかもしれないと思った時点で、どうしようもなく好きになってるんだと思うよ」
「なんか、説得力があるね」
「俺も色々考えて、好きな人、まあ恋人のことだけど、を諦めようとして諦められなかったから」
従兄弟が照れたように言う。なんだか胸が温かくなって、自然と頬が緩んだ。
「恋人のことを教えてよ」
「今度ね、今度」
「今度って?」
「会った時にね」
「いつ帰国する?」
「いつか」
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