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プロローグ
いつからだろう、あたしが女性アーティストの曲ばかり聞くようになったのは。
いつからだろう、あたしが女性ヴォーカルの歌う恋の歌を、自分に向けた歌だといいな、と思って聞くようになったのは。
中学の時に、友達と話したときに、友達とあたしが違う聞き方をしていると気がついた。
「ねぇねぇ美優(みゆ)、ちょっと古い曲だけど、ドリカムの「やさしいキスをして」って歌、昨日改めて聞いて、涙が出ちゃった・・・いい曲だよね?」
「どしたの千佳(ちか)、突然?」あたしが聞くと、千佳はちょっとテヘっとして
「え、いや、あははは、ちょっと微ショックなことがあって、落ち込みかけてたのー」
「なぁに?どしたの?聞いたげるよ?」
「ほら、昨日ニュースになってたじゃんー」
「ええ?なんだっけ?」
「ほら、元ジャニの婚約発表!」
「ああ!そういえば千佳、ファンだったよね?」
「そうなのー!もうショックで立ち直れなくなってー」
「ああ、それはつらいかも」
「でね、そのあと、スマホのラジコつけっぱなしで布団で落ち込んでたの。そしたらそのドリカムのが流れてきて」
「うん、その番組、あたしも聞いてた」
「あー、こんな恋、私もしたいなーって思ってさー。なんか一途に誰かを想って、大切な1日の終わりにキスして・・・きゃー♡♡♡」
え?あたしってあの曲聞くとき、どう思って聞いてたっけ?歌詞・・・眠るまでやさしいキスを・・・って・・・あたしってキスしてもらう側で聞いてる・・・眠るまでの間にそっとキスしてくれるなんて、なんて良いんだろう?って思って聞いてる気がする・・・っていうと、あたしは女性からキスされる側として聴いているんだ・・・
「あ、ふぅん、そ、そうだね・・・ロマンチックだね」
「なに?美優、あんまり共感してくれないじゃない?」
「え?あ、いやー、なんというか・・・まだあたしには恋は早いかなー・・・なんて」
「えー、恋したくない?」
「うーん、なんだか、まだ友達と遊んでる方が楽しいかなーって」
「美優はまだ子供だねっ!」
「う・・・いいもん」
そんな会話だった気がする。
小さいころから、いろんな人の歌を聞いた。お父さんのコレクションの中から、主に女性が歌っているものばかりを抜き出して聞いていた。ドリカムはもちろん、ELT、一青窈、アンジェラ・アキ、大黒摩季、綾香、広瀬香美などなど。中には森高千里やAKB48もあって、とても楽しくなった。
そのどれもが恋がテーマの歌がほとんどで、あたしは女性アーチストが恋する相手を想う歌が好きになった。でも聞くときには、必ずと言っていいほど、あたしへの恋の歌、というように聞いていた。だから、特にアイドルの、ちょっときわどい歌詞、例えばAKBの「口移しのチョコレート」なんてもう、アイドルの女の子があたしに口移しでチョコ食べさせてくれるなんてー♡♡♡きゃー・・・・
うん。
あたし、女の子が好きなんだ・・・
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