弔いの火柱

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 成山の背中を追う、その道中。気になっている事がいくつかあったが、一つに絞って尋ねる事にした。 「アンタは何者なの?」  それはとても人に尋ねる言い方ではないが、さしも気にした様子もなく彼女はしれっと告げた。 「同業者……かな」 「それはさっきの一件で分かったから。あの計画について何を知っているのか聞いてるのだけど」  成山は口を紡いでいたが、さながら意を決したように吐露した。 「〝情欲汚染〟は今回が初めてじゃないわ」 「前にもあった……?」 「そ。二十年も前にね」  ん?   二十年も前?   私、まだ生まれてないけど。  それに彼女は同い年だろう?   倫花の頭にさらなる疑問が浮かんだが年齢のことについて説明に水を注すのは無粋というもの。それに今はまったく関係のない話だ。  結局、倫花は浮上した疑問を頭からかなぐり捨てた。 「最悪だった。新鮮な空気なんてない。換気しても入ってくるのは淫行の残滓の臭いだけ。毎晩、盛り喘ぐ淫獣達の声に怯える人々」  にわかに信じ難い話だが、決して夢物語ではないらしい。それは彼女の真剣な表情に垣間見える微かな怒気が窺えたからの考察である。 「でも止めたんだろ?」 「人は喉元過ぎれば熱さを忘れる生物よ。計画の残滓を消去しない限り、過ちは繰り返される」 「で、消去に漏れがあったサイトが〝Reaper‐Horn〟ってわけね」  すると成山は口ごもるような重々しい声で否定した。 「いいえ。私達は全て消去した。計画に関わったもの全てをね」 「……隠蔽?」 「あまり信じたくないけど、そうとしか考えられない」
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