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遠慮がちに近づいた私に
「もっと」高台くんがそう言う。
「……はい」
私の肩が、高台くんの腕にくっつく距離。ブランケットよりも、近い。
「撮るよ」
カシャカシャ
「あ、連写しちゃった」
「いいよ、ありがとう」
二人で取れた写真を確認した。びっくりするくらい変な顔しているけれど、これは何回取り直しても、この顔になるだろう。それなのに、高台くんは
「可愛いね、萌香」
と、言った。
この顔が可愛く見えるなんて、高台くんは何て……普通の高台くんなのだろう。……いい思い出が出来た。
右手で私のスマホを持ったままだった高台くんが、私の左手にスマホを返してくれた。
必然的にもう少し近づく。スマホはもう、私の手の上にあるのに、高台くんは体を戻そうとしない。ふわりと、優しい香りが春の風に乗る。目を閉じた方がいいのかな?そう思うのと、高台くんの唇が触れるのが同時だった。
今までで一番近い距離だった。目を開くと、まだ近くに高台くんの顔があって
にこ。笑った。
「萌香のハジメテ貰っちゃった」
「わ、私もっ、正義のハジメテ貰っちゃった!」
「……一緒だ」
高台くんがそう言った。暦上は春だけど、まだまだ寒い。だけど、一番寒かった時期を知っている私たちには、十分に……
「暖かくなったね」
こう言えた。
「……そうだね」
にこ。高台くんが、また、笑った。
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