24人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
Dear 櫻井諒
諒、こんにちは。
この手紙を読んでいるということは、お葬式も無事に終わり、あたしが帰った後だよね?
まず言いたいのは、この手紙に書いてあることは真実だということ。
どんなに信じられなくても本当のことです。
まず、あたしは死んでなんていません。
遺体が発見されなかったでしょ? ちなみに、両親も健在です。
本当の親じゃないけど。
なぜこんなことになったのかと言うと、あたしが自分の国に帰ることになったからです。
その国はもう一つの日本です。
地球は丸いって知ってるよね?
実は諒達が知ってる世界大陸は、地球の半分の面積しかなくて、もう半分にあたしの故郷の日本があります。
あたしの故郷の日本は、諒達が住む日本より科学技術がとても進んでいます。
瞬間移動は出来るし、空も自由に飛べるよ!
けど、こっちの日本では戦争があります。
世界が先進国と発展途上国に分けられているのは習ったよね?
日本は先進国です。
理由はこっちの日本が戦争に勝ち続けているから。
世界は文字通りゲームです。
こっちの世界の戦争の勝敗によって、諒達の世界の縮図が変わります。
簡単に言うと、こっちの世界の日本が戦争に負けたら諒達の住む日本で、大災害や戦争など、とにかくよくないことが起こるの。
戦争の兵隊は十五歳からなんだ。
十五歳まで生きることが絶対だから、十五歳になるまでは諒達の住む世界で暮らすことが義務付けられてるの。
つまり、十五歳になったからあたしは故郷に帰って戦地に立たされるってわけ。
そのために死んだことにするんだって。
どう? 理解できた? 嘘でもないし、ふざけてるわけでもないからね?
これが世界の現実であり、真実です。
とにかく、あたし諒達のために頑張るよ。
黙っていて、たくさん嘘をついてごめんね。
あたし、南小のみんなと遊んだ思い出が何よりもの宝物なんだ。
中学に入ると、兵隊になるための訓練で故郷に帰ることが多くなって、いろんなことができなくなっちゃったから。
南小のみんなといる時だけは、あたしは普通の子どもになれた。
戦争のこととか、未来のことを忘れて、心の底から笑えたんだ。
だから、小学生時代のことにこだわってた。
ごめんね? ウザかったよね?
ずっと一緒にいたかった。
一緒に成長して、一緒に大人になりたかった。
十五年なんかじゃ足らないよ。
本当は、こんな簡単に世界の重大機密とか教えたらダメなんだよね。
わがままなんだ、あたしの。
みんなにちゃんとお別れを言いたかったし、生きてるって知っててほしかった。
頭の片隅でもいいから、時々でいいからあたしのことを思い出してくれたら嬉しいです。
まあ、辛かったら忘れちゃっていいよ!
諒? 告白、すごく嬉しかったです。
ありがとう。
あたしも諒が大好きです。
不器用で、口が悪くて、本当は優しい、そんな諒のことがあたしは大好き。
初めて恋をした相手が諒で、あたしはすごく幸せでした。
どうか、幸せになってください。
ずっとずっと、諒の幸せを祈っています。
From 佐倉弥生
最初のコメントを投稿しよう!