* Sweet.1 *

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「ちょっと……当たってくるなよ」 「俺は真っ直ぐ歩いてるけど? 夕里がふらふらしてぶつかってくるんだろ」 カーディガンの先から出た手の甲同士が時々ぶつかって、夕里は高い位置にある茅野の顔を睨む。 「ちゃんと俺の隣歩いて。また知らないおっさんに絡まれるぞ」 「や、やだっ……」 距離を取っていた茅野に引っついて、道路とは反対側を歩く。 街灯に当たらない影になっている道を選んで、向かいにサラリーマンらしき男が来れば、茅野の身体を盾にしてやり過ごした。 「……人見知りが激しいというか、ギャップがすごいな」 「は、はぁ? なにが……?」 手が無意識に茅野の服の裾を掴んでいて、夕里はぱっと離した。 消えたいくらい恥ずかしい……。 文句を言おうにもまともに顔も見られなかった。 下唇をもごもごと噛んで、夕里は胸のドキドキしてむず痒い感覚をやり過ごす。 「あんまりそういう顔して1人で歩くなよ」 百面相しているのがおかしいと思われたのだろうか。 夕里にしか聞こえないような音量で、夕里にそう囁いた。 2人きりでいると体温が上昇して、思ったことも口に出せないから、ちょっと変な気分だ。 駅の改札に続く階段のところで、「ここまででいい」と言った。
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