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衝撃の残像
真っ白なスーツのところどころに泥がかすれ、整った顔には殴られたようなドス黒い痣が浮かび上がっている。
対照的な墨色のスーツの男たち複数人に囲まれて、背後には壁、逃げ場がない。
「殺るんなら一思いにやれよ……」
ちんたらしてんじゃねえ、とばかりに周囲を睨み付けて覚悟を決めたように言い放つ男を、ニヤニヤと含み笑いを浮かべながら取り囲んだ。
「組織を裏切った野郎がデケェ口叩いてんじゃねえ! てめえは頭領の顔に泥を塗りやがったんだからな。つまりは組織全体にこの上ない恥をかかせてくれたってわけだ」
「恥には恥を持って返すってね? せいぜい時間をかけてたっぷり可愛がらせてもらうさ。それがてめえに対する頭領からの制裁だ」
その言葉通りに追い詰めた彼を捕らえ羽交い絞めにし、地面に押し倒して両の腕を靴で踏みつける。痣の浮かぶ頬をペチペチと叩き顎先を掴み上げ、ともすれば首を絞めるような勢いで脅しをかます。そうされて尚、降伏のひと言さえ漏らさない強気の彼を見下ろして、男たちはゴクリと喉を鳴らした。
「さすがに組織の幹部を張ってただけはあるってとこか? だが、てめえのその意地がどこまで持つかな?」
少し逸ったように言葉を上ずらせた男の顔がいやらしく歪み――シャツのボタンがひとつひとつ弾かれて白い肌があらわになるごとに、黒いスーツの男たちの口元がニヤリとゆるんだ。
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