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3.ピアノの下で秘密の逢瀬
〇春永の研究室
春永がピアノで『愛の夢』を弾いている。
突然研究室(防音室)のドアを開けて主人公が入って来たため驚く春永。
「なっ!? どうしてあなたがここに!?」
昼休みだから弁当を食べに来たと話す主人公。
時計を見る春永。
「ああ、確かにもう昼休みでしたね。一限の授業が終わってからずっと研究室に籠っていたので気付きませんでした」
籠っていたことに対して尋ねた主人公に、
「ええ。演奏会の準備です。こうなることは分かっていたとは言え、大学の仕事とピアニストの両立はなかなか大変ですね」
椅子から立ち上がり、主人公の元へ近付く春永。
「で、私と一緒にお昼が食べたい、と?」
積極的な主人公に困ったような笑いを返す春永。
「仕方ないですね。一緒に食べましょう。今日は私もお弁当を買ってあるんです」
デスクへ向かう春永、ビニール袋を下げて戻って来る。
断られるかと思ったと話す主人公。
「え? まあ教授が研究室で女子学生と二人きりでいるのは好ましいことではありませんが・・・・・・この時間帯はいつも誰も来ませんからね」
「ええ、こっちの椅子に座って下さい」
テーブルを挟んで向かい合って座る春永と主人公。
「それじゃ、いただきます」
春永、主人公の弁当箱を見て驚く。
「それ、自分で作ったんですか? 全部?」
「実家が遠いから大学に入学した時から一人暮らしとは聞いていましたが・・・・・・。ちゃんと自炊もして偉いですね」
「私も料理は嫌いではないですが・・・・・・最近は忙しくてコンビニ弁当や外食ばかりになってしまってます」
「にしても本当に美味しそうだな。生姜焼き、私大好物なんです」
生姜焼きを箸で取って差し出す主人公。
「え?」
「『あーん』って、まさか、私に? いやいや、流石に良い大人がそれは・・・・・・。でも、生姜焼き・・・・・・」
躊躇う春永、困ったように笑う。
「あなた、私が断れないこと知っててやってるでしょう?」
にっこり微笑む主人公に、
「・・・・・・もう、仕方ないですね。あー、んっ・・・・・・」
口を開いて生姜焼きを食べる春永、主人公の手料理の美味しさに感動する。
「お、美味しい・・・・・・!」
「(独り言)あなたと一緒になったら、こんなに美味しい生姜焼きを毎日食べられるんですね・・・・・・って、何でもありません」
慌てて首を振る春永。
「それよりも試験はいかがですか?」
返事をする主人公。
「あとドイツ語の考査だけですか」
勉強を教えて欲しいとリクエストをする主人公に、
「まあ、ドイツは学生時代に留学していたこともあるので教えられないこともないとは思いますが・・・・・・。分かりました。食べ終わったら一緒に勉強しましょう」
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