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一人立ち
ーー例えば、出しっぱなしの恋愛小説。
興味すらわかない人の恋愛話の本を片付けないとしかられたら。
ーー例えば、カピカピに乾燥したピーナッツクリーム。
食べたことすらないピーナッツクリームの蓋を開け放したと疑われたら。
ーー例えば、派手な柄のサンダル。
ひどい趣味のサンダルを出しっぱなしと責められたら。
相手を疑う一方で自分である可能性を考えないような人間とは、関わりを断つのがいい。少なくとも俺はそう思う。
仮にそれが生まれ育った生家であったとしても、だ。
ーーだから、俺は家を出た。
有浦 俊介、二十歳の春のことである。
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