一人立ち

1/5
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ

一人立ち

ーー例えば、出しっぱなしの恋愛小説。  興味すらわかない人の恋愛話の本を片付けないとしかられたら。 ーー例えば、カピカピに乾燥したピーナッツクリーム。  食べたことすらないピーナッツクリームの蓋を開け放したと疑われたら。 ーー例えば、派手な柄のサンダル。  ひどい趣味のサンダルを出しっぱなしと責められたら。  相手を疑う一方で自分である可能性を考えないような人間とは、関わりを断つのがいい。少なくとも俺はそう思う。  仮にそれが生まれ育った生家であったとしても、だ。 ーーだから、俺は家を出た。 有浦 俊介(ありうら しゅんすけ)、二十歳の春のことである。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!