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「私の彼氏、優しすぎてたまんない! 困らせてやろうって思うのに全然困んないんだよ」 「超面倒くさい女じゃーん」  女子グループに所属できたのは高校二年になってすぐ。  学校が再編成にかかり、クラス替えやらなんやらで気がついてみれば、二年生だけ一クラスになっていた。 「転校生?」  一番最初に声をかけてくれたのは、優しい彼氏ができたという原田優子。  一年の時から、目立つ子だなぁと思うほど賑やかで人当たりも良く、生徒会長候補とも言われていて、そんな彼女が一年窓際で図書貸し出し数ナンバーワンを叩き出した私へ声をかけてくれたものだから、嬉しくてかしこまった自己紹介をしてしまったのは、今でもいい思い出。 「ひなたっていうの? いい名前なのに勿体なーい!」  そう言って人生初の女子グループへ所属したわけで、そんな中で素敵な彼氏の話を延々聞かされている。 「でさ、今度彼氏の慰安旅行、友達も沢山誘って参加していいらしいのよ、みんな行かない? 宿泊費だけは出る!」 「え!? マジで? 参加するしか選択肢なくない?」  優子を取り巻く二人の女子は、ぐーんとテンションを上げ、荷物の相談と自分の彼氏をどうするかと盛り上がっていく。 「ひなたも来るでしょ?」 「え? いいの……?」 「あったりまえじゃん」 「でも私……彼氏いないし……」 「そんなこと気にしてんの!? ひなただけいれば十分だよ!」  みんなが彼氏とラブラブしている中で、果たして年齢イコール独身の私が楽しめるのか。  そんな心配ばかりしている横で、優子はゲラゲラと私の背中を叩きながら笑った。 「向こうも何人か職場の人間連れて来るらしいから、いい人ゲットできるチャンスじゃない?」 「ありがとう」  彼氏かー、どんな感じなのかなぁ。
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