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意味も分からず夢と比べられ、真っ赤な顔で固まってしまった私をよそに、知花くんはのんびりと立ち上がる。
あの発言の後に、どうして平常心でいられるのか理解が出来ない。
「もう昼休み終わるんだっけ?やべー、もったいないことした」
「今の生徒会、眠る暇もないくらい大変なの?」
「いや、別に。雛子に膝枕してもらいたかっただけなんだけど、つい本気で寝てた」
「……そういうのって、普通声に出さないよね」
「え、そう?また貸して」
「……」
何でいつも私ばっかり振り回されちゃうんだろう。
知花くんと一緒にいると、胸の音が速くて仕方ない。
「そろそろ教室戻るか」
「あっ、待っ……」
知花くんが嫌そうな表情をしながら教室を出ようとするのを、とっさに腕をつかんで引き止める。
「え?」
と、聞き返されて、ハッとする。
特に言いたいことがあったわけじゃなくて、まだ一緒にいたかっただけとか……言えない。
視線を落とすと、見えるのはポケットからはみ出す制服のネクタイ。
「あ、えっと……、ネクタイ!」
「ネクタイ?」
「ネクタイ、持ち歩いてるんだね。それなら、どうしてつけないの?」
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