似た者同士。

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似た者同士。

「 ~~ッッ!!こ、この石頭…!! 」 痛みの余りに目が回り、目の前がクラクラする。 それはギルバートも同様で。 こめかみを擦りながら、蔑むような眼差しで俺を見ていた。 「……ッ、王族のオレに頭突きするなんて。……オマエ、その身がどうなるか分かってんだろうな?」 ギロリッと睨むギルバートに俺は俺なりの言い分を主張する。 「ふざけんなっ!!お、お前がエロい事ばっかり言ったり触れようとしたりするからだろ、この変態っ!!」 ……急に胸に触れたり、口の中に指、突っ込まれたり……。 思い出しただけでも顔から火が出そうになる。 ……そもそもだなぁ、そういう行為は俺はする側(、、、)だと思っていたんだ…。 だからされる側(、、、、)になるなんて思いもしなくて。 こんな辱しめを受けるなんて…。 男として屈辱的すぎんだよ!! このバカ皇子!! 「ハァ?お前が隙だらけなのが悪いんだろう?オレのどこが変態なんだ?」 「す、隙だらけなら、いきなり触んのかオマエは!!」 「……さっきからお前の胸がオレの目の前で揺れて目に止まるんだから。男なら触るだろ?」 「フツーは触らねーんだよ!!」 急に訳わからかん事を力説されて。 思わず胸元を抑えた。 「もう、俺を見んな!!近寄るな!!この変態ッ!!」 「ハァ?それは無理だろ。オマエはオレの婚約者だし…。触って何が悪いんだ?」 フンとドヤ顔するギルバートに俺は唖然として言葉を失った。 ……エミリア、確かにコイツとは結婚したくないよな…。 それは俺も同意だ。 コイツ、絶対に他の女にも手を出すぞ……。 例え目の前のコイツがこの世界の女性が絶賛する程、全てを兼ね備えたハイスペックなイケメン皇子でも…。 コイツだけは絶対……。 エミリアに近付けさせねぇ!! 取っ組み合いしながらギルバートを近寄らせないように必死に力を入れるが、当のご本人様はニヤニヤとその様子を楽しそうに見下ろしていて。ものすごく気分が悪い。 くそっ!! 少しでもコイツは俺に協力してくれるかも知れないなんて……。 淡い期待した俺がバカだった……(泣) 心の中で舌打ちをしていると、クスクスと笑う女性の声がどこからか聞こえてくる。 「ギルバート殿下とお嬢様って仲がよろしいんですね♪」 俺達の様子を黙って見守っていたのか、マリアが興奮した様子でキャアキャアと女子特有の黄色い声で叫んでる。 「じょ、冗談じゃないっ!!それに仲良くなんかないから!!」 いつの間にか部屋に入ってきたマリアに向かって強く否定する。 コイツより俺はマリアと仲よくなりたいんだよ。もちろん、男として!! なのに、こんなヤツと仲良くみられるなんてマジで最悪だ…(泣) 「ホゥ……他の者からお似合いに見えるみたいだぞ?オレ達は…(笑)」 「おまっ、ふざけんな!!お似合いだなんて一言も言ってないだろう…ッ……え?!…きゃあああッッ!!」 両胸を掴まれて。 ギルバートに言い返そうとして虚を突かれた俺は、自身の甘い声に顔が瞬時に赤くなる。 「ばっ、ばっかやろォ!!勝手に触ん…なって何度も言っ…てっ……ああぁん!!」 平手打ちにしようとしたのに、服越しに乳首を弾かれてるとビクンとエミリアの体が大きく跳ねて。ガクッと力が抜けていく。 雷が落ちた如く、突き抜ける快感に驚いてしまった俺は力が抜けて倒れそうになる身体を受け止める、ギルバートとの非対称な体格に。 今の自分は【女】だと自覚せずにはいられず……軽くショックで言葉が出てこない。 それだけでもショックなのに……。 「感じやすいんだな…アユム?」 俺だけに聞こえるようにクスッと笑いながら耳元で囁くギルバートの通る低い声にゾクゾクと感じて。下半身がジュワと濡れる感覚に戸惑ってしまう。 「んぅぅ!!」 また小さくブルッと体が反応すると、俺は変な声を出さないように、あわてて両手で唇をふさいだ。 コ……コイツ……!! マリアの前で。 なんつーハレンチな事をッッ~!!(泣) 怒りと恥ずかしさで沸騰寸前の俺にマリアの背後からギルバートを諌める声が聞こえてきた。 「……ギルバート殿下、姉との正式な婚姻はまだですから。お戯れは控えて下さい…」 静かに怒りを含めた声でギルバートを(たしな)めるノアに興醒めしたのか、ギルバートはフンと面白くなさげにベッドから降り、俺から離れていく。 「ギルバート殿下。迎えの者が到着していまして…「チッ。フランツの奴か。ハァ…………オイ、エミリア!!」 急にギルバートに大声で名前を呼ばれた俺はビクッと声に反応する。 「……アユム、また来る。それまでに迷い人の事を調べといてやる。オレに感謝しろよ?」 誰にも聞こえないように耳打ちした言葉に。 俺は驚いてギルバートを見つめた。 クスッと笑うギルバートにさっきまでの怒りは驚きに変わって。 何故かその笑顔を直視できなくてプイッと視線を反らすと。 ふとギルバートの背後に立つ、ノアの瞳と目が合って。 何故か俺は目を反らしてしまった。
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