一品目 # ブラウニー

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一品目 # ブラウニー

カーテンの隙間から覗く空は灰色で、今にも雨が降り出しそうだった。天気予報によると、明日は晴れるらしい。 日曜の昼間にゴロゴロと出来る私は決して「暇人」などではなく、天気のせいでたまたま予定が入らなかっただけの、そこらへんにいる女子高生。 そんな女子高生の悩みの一つ。【友達の誕生日プレゼント】。誕生日が早い私はクラスメイトから既に貰ったのだが、みんなレベルがおかしいのだ。 フェイスタオルを数枚くれた子。バスセットをくれた子。写真立てをくれた子。オススメの小説をくれた子。……適当にお菓子の詰め合わせをあげていた中学時代とは違うことを思い知らされた。 もらったものは返すべき。そう思い、調べてみたり、出かけてみたりしたのだが、結局良いものは見つけられなかった。 そして今日に至る。何故こんな前置きをしたかというと、明日、ある友達の誕生日がきてしまうのだ。……そう。“きてしまう”。未だプレゼントを決めれてもいないというのに。 「はぁ」と半分諦めながら今日のおやつは何を食べようかとレシピを開く。小学生の頃からお菓子作りが好きで、高校生になった今でもたまに作る。 パラパラとめくっていくと【ブラウニー】が目に入った。 そういえば…と、その友達のことを思い出した。確か、甘いものが大好きだと言っていた。 今日、ブラウニーを作って、少しおやつにつまむ。そして残りはプレゼント用にラッピングすればいいのでは?? そんな考えが頭をよぎった。自分にしては良い案だと思う。おやつと言うと聞こえは悪いが、人にあげる以上味見はしておかなくてはならない。……なるほど、やっぱり良い案だ。 そこまで考えをまとめると、早速買い出しに行った。 帰ってきたのは13:07。今から作ればちょうどおやつになる。……私は天才か。 私はレシピにそってのんびりと作った。 いつもなら紙の型に入れて焼くのだが、今回は天板で焼くことにした。スクエア状に切り分けて、良い感じにラッピングすれば、それはおやつからプレゼントへと進化するのだ。 まぁでも、プレゼントという名のおやつですので。早速頂きますか。…と切り分けた残りに手を伸ばす。 少し冷蔵庫に入れていたのもあって、持った指先がヒンヤリとした。口に近づけると甘い香りがフワッと香る。それに反応して口の中にヨダレが溢れてきた。 ゴクリと唾を飲み込むと、手に持っていたそれを口に入れる。 ほのかな甘み。冷やしたことにより全体に馴染んだチョコレートの味。生地は丁度良いしっとり感。 堪らん、この味。……私はもしかしたら天才なのかもしれない…とまで思えてくる。まぁ、本当の天才はこのレシピを生み出した人だけれど。 翌日、プレゼントは友達に好評だった。…ただ、何故か「料理上手」というレッテルが貼られてしまった…。 ちゃうねん、私、お菓子作りだけやねん。
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