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少し経って冷静さを取り戻した齋東さんは、
「ゴメン……ゴメンね、君に言っても仕方がないのに」
Ωは中性的で綺麗な顔立ちが多いと聞くが
齋東さんも多分に漏れず……そんな顔をクシャリと歪ませて
無理に笑おうとするから涙が零れてしまって。
俺が想像すらできない辛い事と戦って
今のこの人があるんだと思うと不用意にそれ以上
踏み込んで良いのか迷う。
それでも――
「俺に出来ることがあるのなら」
「君に?」
αである君に?と齋東さんの口角が上がった瞬間、
俺は今の一言を後悔した。
だから、それは話を逸らすつもりで出た言葉だった。
「ショウ先生の件ですけど、俺が外された理由しってますか?」
答えなど期待していなかったという意味だ。
「詳しくは分からない」
「……その言い方だと少しは思う所があると聞こえます」
齋東さんと目が合った。
その眼をみて齋東さんが今わざとその言い回しを使ったんだと、
――確信、した。
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