683人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「トドメはフクちゃんに任せるよ」
小声で肩のオウルに声をかけ、慧はクイと口角を上げた。オウルは勢いよく男の方へ飛んで行き、急所である眉間に嘴を突き立てる。
「ぐあああああああっ!!」
断末魔のような叫び声をあげながら男は床に倒れ、痛みのショックで気を失ってしまった。
「おい、何をやったんだ?」
水無月が不思議そうな顔で慧のところへやって来る。もちろん、相手をしていた男は床で伸びていた。
「ちょっと水無月さんっ! 慧! こっちも手伝って!!」
まだモタモタしている翔平に、水無月はチッと舌打ちすると助っ人に向かう。
「ほんっと強いなぁ、水無月さん」
水無月が駆けつけると、あっという間に男をのしてしまった。
「だから、普段からもっと鍛錬しとけって言ってるだろうが!」
「してます、してますよっ! でも、水無月さんを基準にしないでください! 水無月さんは規格外なんですっ!」
「お前もデカイ図体してんだから、こんな奴ら、一発で仕留めろ」
「そんな無茶な……」
「こっちの優男の方がよっぽど強いじゃねーか」
慧を見ると、にこにこと翔平に手を振っている。
翔平は知っている。慧の側にはオウルがいるのだ。二対一なら、それは有利に決まっている。
「慧も色々と規格外なんですよ!」
「ほらほら翔平君! いじけてないで行くよ~」
能天気な慧の声にイラッとしながらも、翔平は密かに胸を撫で下ろしていた。
蛍が攫われたと連絡を受けたときから乱闘になるまで、いつもので慧であって、そうではなかった。これまでそんな慧を見たことがなかったので、内心心配していたのだ。冷静さを失っているのではないか、と。
大切な仲間が攫われたのだ。そうであったとしても仕方がない。しかしそれは、戦場では命取りとなる。
「いい肩慣らしになったな」
意気揚々と歩き出す水無月と慧の後ろについて行く翔平は、ホッとしながらも、苦々しい笑みを浮かべていた。
最初のコメントを投稿しよう!