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食事も終わり、俺が片付けをしている間に香緒さんはコーヒーを入れてくれていた。2人分だから、片付けはあっという間に終わり、リビングのテーブルに先に座っていた香緒さんの元へ向かった。
コーヒーのいい香りがそこに漂っていた。
「はい。これ」
ソファに座った途端、香緒さんから立派な箱を差し出された。
「これって…」
「バレンタインデーだし、チョコレートだよ。両親の友達がショコラティエしてて、僕も子供のころから大好きなんだ。だから武琉にも食べてほしくて」
「ありがとうございます」
そう言って早速箱を開けると、四角いチョコレートが美しく並んでいた。
俺は端にある深い色味の一粒を手にすると口に運んだ。
香緒さんは少し心配そうにこちらを覗きこんでいる。
「凄く…美味いです。こんなの初めて食べた」
「でしょ?」
俺が感嘆の声を上げると香緒さんは嬉しそうな顔を見せた。
「じゃあ香緒さんも…」
そう言ってもう一粒手に取ると、香緒さんの口元にチョコを差し出した。
そして開いた口にそれを入れる。
「味見…していい?」
俺がそう言うのを不思議そうに見ている香緒さんに、ゆっくり唇を落とす。そのまま隙間から舌を差し入れると、まだ溶け切っていないチョコレートを、救い取るように舌を絡めた。
「…んっっ…」
2人の熱でチョコは溶けて、先程食べたものより甘い風味が口に広がって行った。
そのまま味わう事を止められず、俺は一層深く舌を絡める。
「はぁ…っ…」
時折香緒さんから吐息が漏れ、俺を熱くさせる。
何度キスをかわしても、いつも甘い。
ようやく唇を離すと、香緒さんは耳まで紅く染めながら潤んだ瞳でこちらを見ている。
「こっちも美味しいですね」
俺がそう言うと、より顔を紅くする。
「ほんとに!武琉、急に甘くなるからびっくりする!」
ちょっと怒ったように言う香緒さんが俺は可愛くて仕方ない。
「こんな事するのは香緒さんにだけですよ」
そう言って香緒さんの頰にキスを落とす。
俺にとって香緒さんは、どんなチョコレートより甘い存在だ。
初めて2人で過ごすバレンタインデーは、きっと忘れる事はないだろう…。俺はそう思いながら再びチョコレートを味わった。
番外編Fin
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