バレンタインSS 2020版

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食事も終わり、俺が片付けをしている間に香緒さんはコーヒーを入れてくれていた。2人分だから、片付けはあっという間に終わり、リビングのテーブルに先に座っていた香緒さんの元へ向かった。 コーヒーのいい香りがそこに漂っていた。 「はい。これ」 ソファに座った途端、香緒さんから立派な箱を差し出された。 「これって…」 「バレンタインデーだし、チョコレートだよ。両親の友達がショコラティエしてて、僕も子供のころから大好きなんだ。だから武琉にも食べてほしくて」 「ありがとうございます」 そう言って早速箱を開けると、四角いチョコレートが美しく並んでいた。 俺は端にある深い色味の一粒を手にすると口に運んだ。 香緒さんは少し心配そうにこちらを覗きこんでいる。 「凄く…美味いです。こんなの初めて食べた」 「でしょ?」 俺が感嘆の声を上げると香緒さんは嬉しそうな顔を見せた。 「じゃあ香緒さんも…」 そう言ってもう一粒手に取ると、香緒さんの口元にチョコを差し出した。 そして開いた口にそれを入れる。 「味見…していい?」 俺がそう言うのを不思議そうに見ている香緒さんに、ゆっくり唇を落とす。そのまま隙間から舌を差し入れると、まだ溶け切っていないチョコレートを、救い取るように舌を絡めた。 「…んっっ…」 2人の熱でチョコは溶けて、先程食べたものより甘い風味が口に広がって行った。 そのまま味わう事を止められず、俺は一層深く舌を絡める。 「はぁ…っ…」 時折香緒さんから吐息が漏れ、俺を熱くさせる。 何度キスをかわしても、いつも甘い。 ようやく唇を離すと、香緒さんは耳まで紅く染めながら潤んだ瞳でこちらを見ている。 「こっちも美味しいですね」 俺がそう言うと、より顔を紅くする。 「ほんとに!武琉、急に甘くなるからびっくりする!」 ちょっと怒ったように言う香緒さんが俺は可愛くて仕方ない。 「こんな事するのは香緒さんにだけですよ」 そう言って香緒さんの頰にキスを落とす。 俺にとって香緒さんは、どんなチョコレートより甘い存在だ。 初めて2人で過ごすバレンタインデーは、きっと忘れる事はないだろう…。俺はそう思いながら再びチョコレートを味わった。 番外編Fin
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