3457人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
「もぉ~花音ちゃんがなんかだったら、私なんて一生無理だよ~」
「友香ちゃんはなんかじゃないです」
「先輩いとるけん大丈夫やろ?」
「だいじょばないよぉ~」
友香ちゃんには中学時代から好きで追いかけ続けている一年上の先輩がいる。一向に付き合うとか、そういう言葉がないとは聞いているけれど、一度だけ好きだって言ってもえたんだってこっそり教えてくれた。
私が友香ちゃんと友達になったのは高校3年のことだから、高校生の頃の先輩には会ったことはない。
でも、大学生になって会ったその先輩は、すごくすごく友香ちゃんを大事にしてるって感じが滲み出ていて羨ましいなっていつも思っていた。
それなのに友香ちゃんは彼女だと言ってくれないって嘆いている。好き同士でも難しいんだな恋愛って、と思うけれど、ずっと好きな人がいる友香ちゃんが羨ましい。
「そやけど、結婚ってそないせなあかん?」
「……今更断れません」
「そうで?」
希依ちゃんが強い視線で私をぐっと見つめるけれど、私にはその視線がいつも受け止めきれなくて途中で視線が下がってしまう。
希依ちゃんは強くて、逞しい。
美人で背も高くて、ショートカットがすごく似合っていて、それがボーイッシュにならずにキュートさを感じさせる人だ。
家のことでいっぱい苦しんだらしく、実は旦那さんがいるという不思議な子。だけど、希依ちゃんの強さを目の当たりにしていると、こんな希依ちゃんだからこそ高校生で結婚するなんて決断ができたんだろうなって尊敬する。
別に子供ができたとか、そんなわけでもないのに結婚したのは不思議ではあるけれど――そこは、ある種同じ轍を踏んだことのある身としては踏み込んで聞けずにいた。
「久須見先輩のことは、いいの?」
「……うん。子供できたって言われたら、どうしょうもないのかなって」
「そっか……ごめんね花音ちゃん。私、久須見先輩いい人だって」「友香ちゃんのせいじゃないです。悪いのは、私だから」
最初のコメントを投稿しよう!