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恋愛をしている人って、恋愛をしていない人よりキラキラして見える。
私だってまだ枯れてはいないはず。これでもまだ二十代ですから。
それでも一歩を踏み出す力と勇気と自信があるだけで、こんなにも見える世界が違うのだと打ちのめされた。
「ねぇ、茜こそ好きな人とかいないの?」
まさか綾香から質問返しされるとは思ってもみなかった。
好きな人…か。胸がドキドキするのは、いつだって二次元または声優さんのみなんだよな。
「うーん、今はいないかな」
「今は?」
そりゃ、私にだって過去に好きな人の一人や二人くらい、いたことならある。もちろん、お付き合いしていた人も…。
それももう今となっては、かなり昔の話となってしまったが…。
「社会人になる前に付き合ってた人がいたんだけど、その彼とは社会人になってからすれ違いが増えて、別れちゃったんだけどね」
こんなにも呆気なく終わるなんて思わなかった。あの頃もう少しだけ努力していたら、今頃何か変わっていたのかもしれない。
なんて考えたところで、過去を悔やんでも過去は変えられないし、どっちみち彼とは終わる未来だったのかもしれない。
そう思えば、少し気持ちが楽になり、自然と彼とのことは過去にすることができた。
「そう…だったんだ。それは辛かったね」
綾香の言う通り、当時はとても辛かった。嫌いになって別れたわけではなかったから。
今となってはいてもいなくても、そんなに私の日常が大きく変わることはなかったが…。
「あ!今となっては良い思い出なの。もう彼のことは好きじゃないし…。
ただ、なんとなく心の中にずっと残ってて、時々、ふと自分がまともに恋愛をしていた頃が幻なんじゃないかって思えてくるんだよね」
私だって恋愛がしたいと思う時くらいある。
それでも、元彼と別れて以来、三次元でときめくことがなくなってしまった。
元彼との恋愛だって、少女漫画みたいなキラキラした恋愛というよりも、一緒に居て安らげるだけの普通の恋愛だった。
今となっては、あの頃が輝いて見えるし、同時に普通の幸せとは何なのか分からなくなってしまった。
だから、私はまだ取り残されたままなのかもしれない。
だって、その答えを見つけようとしていないから。
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