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そしてどちらからともなくキスをした。ああ、オレ、ちゃんと優とキスしてるんだ…そんなことをふと思ったら、何故か自然に涙の雫がぽとりと落ちた。
「慎太郎…?ごめん、イヤだった?」
優が慌ててオレの両肩に手を置いたまま、少し悲しそうな顔をしたので慌てて首を振って否定した。
「違う!違うよ。ごめん…。ちゃんと優とキス出来たんだって思ったらなんだかホッとしたんだ。オレ…意気地がないから、その…うまく言えないからみんなに誤解されるし」
「慎太郎の言うことはちゃんとオレにはわかるよ。ただ、ストレートな時があるからたまにココに突き刺さる」
優は左胸をトントンと叩いて笑った。
「ホントごめん。なんかたまに真逆の意味で伝わっちゃうときがあって、そういうときはちゃんと言ってくれたら謝るから」
なんだかオレも胸が痛くなった。それは傷ついたとかそういうのではなく、優が“慎太郎の言うことはちゃんとオレにはわかるよ”と言ってくれたことが嬉しくて、キュンと胸が締め付けられたのだ。いいな、こういうの。自分のことをわかってるよ、って当たり前のように言葉にしてくれるひとがちゃんといるってこと。
「慎太郎…もっとキスしたい」
今度は優がオレを抱き寄せてくれた。ホントかな?優、手の動きがキス以外も誘ってるような。
「………ッもう!優、息出来ないじゃないか」
オレが笑いながら怒ると、優は子供みたいにはしゃいだ。ああ、よかった。優…すごく嬉しそう。オレだけじゃないんだ、優も嬉しいんだな。
「ねぇ…慎太郎、ちょっとだけお願いがある」
「何?」
「お酒、飲もうよ。オレに…ちょっと勇気をくれ」
優は大胆そうだったけれど、幸せすぎて恐いから…と言った。酒の力を借りるのはどうなの?って思うかもしれないけれど、オレたちみたいに臆病に恋をしてる者同士は何かの手助けが必要なのだと思う。
それに……優はともかく、オレにとっては初体験になる。だからきっと、優はオレを恐怖から解放してくれるつもりでそう言ったのだと思った。
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