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「……何をするつもりなんだ?」
雨宮は早々と背広をハンガーにかけてダブルベッドに座っているが、黒田は背広を着たまま所在なげにたたずんでいる。まあ初めて男と体を重ねるにしては落ち着いているかと思っていたら、そうではなかった。
「ここに女を呼ぶのか? 悪いが、三人でなんて無理だ」
黒田の見当違いな発言に、思わず笑いがもれた。なるほど、黒田はまったく状況を飲み込めずにここまで来たらしい。
……まあ、それならそれで。
「そんなことしませんよ。とりあえず、こっちに来てください。大事な話があるんです」
雨宮がベッドの横をぽんと叩くと、黒田は意味がわからないながらも隣に来て座った。その間に雨宮は自分のネクタイをほどく。
「話というのは……」
最後まで言わせなかった。
雨宮は黒田をベッドに突き倒し、腕をつかんで黒田の体を裏返しにした。
「なっ……ッ」
うつ伏せになった黒田の背中に馬乗りになり、手を背中に回させる。
「何を君はっ」
「暴れないでくださいよ。さっきのこと、会社の人に知られたくないでしょ?」
耳元で囁くように告げると、黒田はびくりと動きを止めた。その隙にネクタイで両手首を手際よく縛り上げる。
これでもう、黒田は逃げられない。
再び黒田を転がして仰向けにして、雨宮は黒田の長い足の間に体を割り込ませた。
「……」
雨宮の意図に気づいたものの、まさかという顔でぎこちなく見上げてくる黒田にそそられながら、雨宮はするりと黒田のネクタイを取り払い、首の際まできっちりと留められたワイシャツのボタンを一つずつ外していく。
脱がされる緊張に耐えかねたように、黒田が口を開いた。
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