2.前世の私

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扉を抜けてすぐに目にしたのは、自国アスタリアとは段違いに発展した街並みだった。アスタリアが遅れている訳ではないけれど、この国、ラディア皇国は他の国達とも段違いで芸術魔法に秀でている。 相変わらず、とても美しい街並みだ。 何度見たって息を呑んでしまう程美しいこの景色に、私は魅入っていた。目に映るきらびやかな街並みは、ラディア皇国の職人達の手によって細部まで繊細に作り込まれている。街並みそのものが一つの芸術作品のようだ。 そして街ゆく人々も活気づき、路上ではちらほら演奏者や、大道芸などが見受けられる。 楽しそうな人々の笑顔がとても眩しく思えた。 ラディア皇国、王都から約2時間。 トランジスタ公爵家までの道のりに掛かった時間は大体そのくらいだった。 領地を任される公爵家にしては随分王都に近いのは、王都の管理を任されているからだろう。 一度目の前世では、あまりその詳細を知ることは出来なかった。きっと他にも理由が有るのではないかと、あの頃から思っている。 馬車が公爵家の門の目の前に止まる。 それから公爵家の門番の一人が近づき、御者(ぎょしゃ)と会話を交わす。その間にもう一人の門番が馬車の扉をノックした。 ゆっくりと開かれた扉から目にしたのは、やはりあの日と全く同じ景色だった。
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