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徳憲は露骨に舌打ちしてみせた。
「悦地さん、忠岡さん……二人だけの内緒話はもう終わったんですか?」
「そォ怖い顔をするなよォ? この事件はキミの手柄だろォ? 何せ、キミが英川才慥を逮捕したんだからさァ!」
「そーだよ忠志くーん? これでまた実績を上げたねー。出世街道まっしぐら!」
忠岡までいけしゃあしゃあと太鼓持ちに徹している。
徳憲はちっとも嬉しくなかった。
手柄を上げたから何だ。全て忠岡の掌の上で踊らされていただけではないか。
忠岡から逃れられない現実を思い知るたび、徳憲は心を痛め、英川に同情した。事件のつど追い詰められて行く英川を救いたかった。
それなのに――いや、だからこそ。
「俺はあなたを信用していません」
徳憲はようやく表明した。
事件の全貌を見通した。
これは推理ではなく直感だ。
仕組まれた構造を見抜いたのだ。
「えー? 急に何を言い出すのよー?」
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