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「……どういうつもりって?」
笑い顔を崩さないままで聞き返してくる。
「……はぐらかさないでください。こないだから私をかまってくるけど、どうして……」
「どうしてって今さらか? とっくにわかってると思ってたがな」
私の言葉を遮って、
「俺を忘れるなとまで伝えておいて、他にどんな意味がある?」
目の奥をじっと覗き込んだ。
「……わかりません。あなたのことなんて、全然知らないのに……」
見つめる目線から顔をそむけると、
「知らない? 忘れたのか…あんた、電車の中で痴漢にあったことがあるだろう?」
と、そむけた頬の横に不意討ちで片手を突かれた。
「……えっ」と、言葉に詰まり、彼の顔を仰いだ。
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