最終章 貴方にガーベラの花束を

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四人にはカウンター席に座ってもらう。 さっきまでおっさん達がいたから、なんとなく申し訳ないけど言わないとバレない。 「あれ、ヒナ?」 「私は奥で在庫状況を確認してきます。」 突然ヒナが立ち上がるので聞こうとすれば、それが分かってたかのように言われる。 「いや、いいのに。ヒナの分の珈琲も作るけど。」 「遠慮しますよ。それでは。」 あの子がつれない態度をとるのは今に始まってるわけではないけれど。 今日くらい別にいいのに。 「まぁ察してやれ。あれはあいつなりの気遣いだろうよ。」 「マスター、それって。」 「アイツはお前らと知り合ってから日も浅いし、色々あんだろ。」 なるほど。 それはそうかもしれない。 鈴なんてほとんど初対面に等しいし、皆と仲がいいわけでもない。 「いい香りだね。千景ちゃん、これって。」 「あぁ、うん。ブルーマウンテン。」 どの豆を挽くのかものすごい悩んだ。 悩んだ結果、私にとって…このカノンにとって特別としているブルーマウンテンにした。 「それじゃあ俺は上にいるからよ。終わったら呼んでくれや。」 「分かった。」 全員分の豆を挽いて、お湯を注ぐ。 マスターから教えてもらった技術すべてをこの一口に。 「はい、どうぞ。」 自分の分も注ぎ、全員に渡す。 「それじゃあ頂くわね。」 杏の一言が合図になり、全員一口。 勿論味は最高だった。 「はい、サンドイッチっす!」 「岸本。」 後で私が作ろうかと思ってたのに。 「これくらいはさせてほしいっすね。お嬢にとっては感謝のお返しみたいにしたいだろうけど、俺からしたら今日で最後っすからね。言わば送別会みたいなもんっすよ。」 「そうよ?日頃のお礼がしたいからって言ったけど、私たちだって送別会したいもの。」 つくづく思うけど…。 岸本と谷中さんってなんだかんだ息ぴったりだよね。
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