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「はい、ココア」
「ありがと、みっちゃん」
小さい頃からお互いに大好きだったホットココアを差し出して、雄飛が座っているソファに私も同じように倣って座る。
この微妙な距離感にさえ戸惑ってしまうのは、やっぱりどこか雄飛の横顔がいつもとは違って見えたから。
いつもみたいに「何しに来たのよ」ってぶっきら棒に言えないのは、雄飛があまりに静かに旅行用のキャリーバックを見つめているから。
「あの―――」
「そんな辛辣そうな顔しないでよ、美優」
「……雄飛」
「もう今さら、行かないでって言わない」
「……」
「だから、もっと笑った顔で俺を見て?」
「え?」
その言葉を聞いて、この違和感の意味を知った。
けれどそれは私が望んでいた事。雄飛を断ち切る為にずっと、今の関係から脱出しなければならないと思い続けてきた末の、彼なりの答え。
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