03.キミは私の愛を摘む。

17/38
226人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
「はい、ココア」 「ありがと、みっちゃん」 小さい頃からお互いに大好きだったホットココアを差し出して、雄飛が座っているソファに私も同じように倣って座る。 この微妙な距離感にさえ戸惑ってしまうのは、やっぱりどこか雄飛の横顔がいつもとは違って見えたから。 いつもみたいに「何しに来たのよ」ってぶっきら棒に言えないのは、雄飛があまりに静かに旅行用のキャリーバックを見つめているから。 「あの―――」 「そんな辛辣そうな顔しないでよ、美優」 「……雄飛」 「もう今さら、行かないでって言わない」 「……」 「だから、もっと笑った顔で俺を見て?」 「え?」 その言葉を聞いて、この違和感の意味を知った。 けれどそれは私が望んでいた事。雄飛を断ち切る為にずっと、今の関係から脱出しなければならないと思い続けてきた末の、彼なりの答え。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!