それを運命という

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「彼女、どうしたんですか?」 「トイレで出産されました。出血が酷くて、危ない状態です」 「えっ?」 嘘だろう?彼女は余命一年だって言っていた。 それに、どう見ても彼女は妊娠している体ではなかった。 「赤ちゃんは?」 「一命はとりとめました」 俺は何故かほっとしていた。 病院に運ばれたが、やはり里奈は亡くなってしまった。 身寄りのない赤ん坊は乳児院に預けられるとのことだった。 「父親は俺です。俺が引き取ります」 咄嗟に出た言葉に驚いてしまったが、これはたぶん運命なのだ。 あれから数年が経った。 「パパー、ボール取って~」 俺は笑顔でボールを拾うと、空高く放り投げた。 小さな手をいっぱいに広げた息子は太陽に向かって思いっきりジャンプした。
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