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プロローグ 〜ハロウィンの前日譚〜
イギリス南部を東流し、古い伝統を持つテムズ川。
そのほとりの田舎町に、ぱっちりおめめと金色の髪がチャームポイントのひとりの少女がいました。
彼女の名前はミサ、小学校5年生でした。
特別な明日が待ち受けていることなど知るよしもないミサは、校庭わきの鉄塔から終業のベルが鳴りひびくと、いつものように赤レンガ造りの校舎を飛びだしていきました。
10月も終わりのこの時期、小高くなった川沿いの石道には、赤黄色のブナの葉っぱがしきつめられます。まるで高級じゅうたんです。
河原には背の高いススキが咲きほこり、やわらかそうな穂先をかわいた秋風がくすぐっています。
ミサは身体がすこしでもあたたかくなるように、ワンピースから伸びた足をちょこまかと回転させ、手はオールのようにブンブン振りまわします。
そうすると家にたどり着くころには、ちいさな額ひたいにたまのような汗が浮かんで全身がぽかぽかしました。
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