今の今まで忘れていたその後

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さて、そんなこんなで街コンや婚活パーティーをある意味楽しんでいた私に思いもよらない事態が起きた。コロナ禍である。 医療事務をしている私は医療関係者ということもあり、結婚披露宴など会食への参加を自粛するよう職場から指示されてしまった。このため、涙をのんで街コンへの参加を断念することにしたのである。そうしてネタが尽きてしまったのだ。さらに私は県外に転勤してしまい、さらに結婚もしたのでもう彼らには二度と会うことができなくなった。 今の今まで忘れていたわけだが、強烈に残った方々が今頃どうしているのか…ふと考えてみることにした。散々な目に遭ってきたが、いざ振り返るとどことなく懐かしいものもあるからだ。これも婚活を真剣にやった証なのだろう。 まず思い出すのは、街コンにスーツでやって来た「夢の国のお兄さん」である。その後の街コンで彼は街コンビギナーでないことも証明された。 確か彼の職場(ちょっとお高いスーパー)は私の自宅アパートからそう離れていなかったはず。安月給の私がわざわざお高いスーパーに行く理由もなく、会うこともないだろうと思っていたが、お高いスーパーに行く理由ができてしまった。 その日、私は腱鞘炎になってしまい、近くの整形外科へ駆け込んだ。かなり痛い注射をしてもらったのだが、帰るついでに昼食を買って帰ることにしたのだ。近辺にはお高いスーパーしかなく、その中にあったファーストフード店に寄ったのだ。そして入口付近で…いらっしゃいませーと言いながら歩くお兄さんを発見してしまった。あれからかなり時間が経っていたが、あの顔は間違いなかった。向こうは私のことなど覚えていないようだったが、スーツを着ていないと痩せて見えた。お兄さん、街コンは私服の方が良さそうよと心の中で声をかけてみた。
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