現実との戦い

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翌朝、目を擦って寝返りを打つと、聞こえてくる笑い声に揺り起こされて、架音は目を開けた。 白いシーツが目に入った。 驚いてその場で身体を起こすと、美乃梨も布団にくるまりながらその場に座り込み、ボーっとしていた。 「どうした?」 架音が訊くと、美乃梨は相変わらずボーっとしながら「別に」と、答えた。 虚ろな瞳が宙を眺めている様子に、架音は恐怖を感じた。 今までこんな美乃梨を一度だって見たことが無い。いつだって笑うか泣くか怯えるか、感情が分かりやすいほど表情に現れるタイプだったのに。 「ねえ、美乃梨。大丈夫?」 肩を揺すると、やはり虚ろな瞳で笑みさえ浮かべずに「うん」と、答える。 架音は慌てて布団を蹴り上げると、リビングに向かった。 ドアを開ければすぐ隣はリビングだ。この笑い声だってリビングから聞こえているに決まっている。 「社長!」 声を上げると、リビングで食事中のマリアと彩羽がこちらを振り返った。その後、葉月がキッチンから出てくると、架音を見て「おはよう」と、声をかける。 「おは…よう…ござい…ます……」 幸せな家庭とはこういうことを言うのか…と、架音はその風景を見て思った。 窓から差し込む眩しいほどの日差し、笑顔の家族と、温かい食事、広くて片付いた部屋。 何もかもが初めて見る光景で、胸が痛くなる。
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