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実穂との待ち合わせ場所である四条河原町の交差点に位置する百貨店の前に行くと、実穂と実穂の彼氏の横田君、そして横田君の友人の男子が、もう先に来ていて、わたしを待っていた。
「ごめんなさい。遅れてしまって」
着付けに手間取ってしまい、10分の遅刻を謝罪すると、3人は「ううん」と首を振り、
「こっちこそ、急に誘ってごめんね」
私と同じく浴衣姿の実穂が申し訳なさそうに手を合わせた。
「星乃も誘えよ、って言ったの俺だし。ごめんな、星乃。他に約束とかなかったか?」
(あ、なるほど。横田君の誘いだったから、実穂は「ぜひ来て!お願い!」って言ってたんだ)
「まあ、あったといえばあったけど……大丈夫」
彼氏に頼まれると弱いのだろう。
横田君のことは実穂の彼氏として面識はあるし、話をしたこともあるが、わたしとはクラスが違うし、特別仲がいいというわけではない。なぜ、わざわざ、わたしを誘ったのだろうと首を傾げていると、
「あの、星乃さん。僕、横田と同じクラスの追坂瑛士(おいさかえいじ)っていうんやけど、知って……る?」
おずおずといった体で、横田君の友人が声を掛けて来た。柔らかな物腰の、優しそうな男子だ。颯手と、どことなく雰囲気が似ている。
「追坂君って2年B組よね。顔は知ってたけど。わたしたち、話をしたことはなかったわよね」
そう答えると、追坂君は軽く頭を掻いて、
「そうやね。じゃあ、はじめまして、なんかな……」
と照れ臭そうに言った。
「それも変な気がするわね。とりあえず、よろしくね、でいいんじゃないかしら。わたしは、実穂の友達で、A組の星乃杏奈よ」
あらためて自己紹介をすると、
「よろしく。星乃さん」
追坂君が人好きのする笑顔を浮かべた。
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