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立ち去った男は、独り残された俺の全てをいつの間にか興奮醒めやらぬ状態へ何処彼処も(いざな)っていた。 罪大き男は、一体どっちなのだろうか。   本当に“罪大き男”は俺ではない。 なかなか鎮まらない雄に焦りながらも、俺は翔琉に対してそう感じながらギャルソンのエプロンで自身の前をさり気なく隠し個室から退室した。 使用済みのバスタオルをバックヤードへと引き上げようとオープンキッチンの脇を通り抜けようとした俺は、一瞬、その手前に立っていた店長と視線が合う。 個室での後ろめたい翔琉とのやり取りを思い出し、俺は苦い表情を浮かべその前を通過する。 「高遠、さっきの女優は出禁にしたから」 通りすがりに店長がそう告げた。 「え?」 「龍ヶ崎様にここ最近、ストーカーしていたみたいだ。それにしても大物のご贔屓は大変だな。ここ最近、高遠のバイトの時間がずれていたことで龍ヶ崎様はオーナーへと直々にクレームを入れてきたらしいぞ。オーナーがすぐ様俺にクレームを入れてきた」 軽く店長は溜息を付くと、「接客、解禁だ」と続ける。 「だが、油断はするな。龍ヶ崎様の女性関係はトラブルが絶えない。物騒な事件ばかりだ」 その言葉に、俺は倒れていた翔琉を助けた二年前の夏を思い出し、同時に先程翔琉から掛けられた甘い言葉の数々も思い出す。 「――でも、きっと大丈夫です」 力強い眼差しを店長に向け、俺はそのままバックヤードへと突き進んだ。 不安になっても大丈夫だ。 だって、その分……それ以上に俺が余計なことを考える余地もない程、翔琉が“愛してくれる”って言ったから。 翔琉と出逢ってから不安だらけの一年が過ぎ去ったけれど、多分二年目は大丈夫……のはず。 こんなにも自分が翔琉から愛されているってことが分かっているから。 「ただ、俺はいつになったら翔琉と……できるんだろう?」 誰もいないバックヤードで布の奥に隠されていた鎮まらない自身の雄をそっと握った俺は、翔琉の声、舌遣い、大きな手の動きを思い浮かべながら手を動かす。 同時に、いつまでも翔琉と添い遂げられない独りよがりの自身の欲望に、流石にほんの少しだけ不安と寂しさを感じてしまう。 その想いが、とうの昔に我慢の限界を越えて一触即発の獣となっていた翔琉を余計刺激してしまうことになろうとは、この時の俺は一切気が付きもしなかったのだが――。 To Be Continued……(スター特典へ)
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