午前三時のシンデレラ

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「ねえ、ピアス」  走ってきた男性はユウタだった。  鼻の先を真っ赤にさせて私に強引に何かを握らせた。  ピアスだ。私がつけているものの反対側。どこかにいってしまったと思ってた片っぽ。  何を今更、そう言おうとしてユウタの顔を見た。  泣いてた。  目が真っ赤になってた。なんなら鼻水も少し出てた。変な顔。 「ごめんって、本当に俺、知らなかった」  そのまま抱き締められた。歩道橋の上。今更だけど、朝の寒さを感じていた。それから人の、ユウタのぬくもり。  今の今まで気がつかなかったけれど結構冷えていたらしい。私の体が思い出したかのようにガタガタ震えた。  強く強く抱き締められる。ユウタは男の子だ。腕の力も強い。 「潰れちゃうよ」  そう言ったけど離してくれない。 「良い曲だった。ちゃんと聴いてなくてごめん」  ごめん、ごめんと謝られ続ける。ユウタの匂いがすぐそこに。顔をユウタの肩に埋める。なつかしい、あの頃みたいだ。  最後にこうして抱き合ったのはいつだっけ? なんだかんだで、もう一ヶ月はしていなかったと思うなぁ。  「シュミ、悪いよ」  私がぼそりと呟く。 「悪くない。俺の方が悪いから」  そんなこと、今更言われても。なんて言わなかった。言えなかった。  初めて、謝ってくれた。なんて事も思わなかった。  そんな野暮ったいことは全部忘れて、私が言いたいのはただの一言だった。 「迎えに来てくれて、ありがとう」
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