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「ククっ…そうか。やはりお前は面白い。暇な時でいいから、いつでも生徒会室に来い」
何が面白かったのかよく分からなかったけど、楽しそうに喉の奥で笑った会長には、さっきまでの品定めするような視線は消えていた。
「まぁ、それくらいなら……気が向いたら行きます」
まあそんな日は来ないと思うけど、という副音声をありありと含んで言った言葉にこの人が気づいたかどうかは分からないけど、気分を害した様子はない。
「あぁ、それでいい」
満足そうに頷いた会長に、案外この人もただの俺様じゃないのかもしれないと思い直した。遥先輩が何か言っていたような気もするけど、多分気のせいだろう。
「かぃ、ちょ……に、った?」
えーと、会長、気に入った?って言ったのか?
「……さァーな?」
惚けては見せているものの、その表情は明らかにからかいを含んでいる。
「っ会長!翔は私が先に見つけたんですよ」
遥先輩はその綺麗な顔を盛大に歪め、会長に詰め寄った。美人が怒る姿は怖いというけど、本当のようだ。
けど、そんなことよりも気になることがある。
「いや、今の話の中のどこに気に入る要素あったんですか」
あ、しまった、つい心の声が。
しかし、その場にいた全員は目を大きく見開いてこちらを凝視している。何か変なことを言ったかと、怪訝な表情で首を傾げた。
「……君、つーちゃんが言ったこと分かるのー?」
突然、今まで黙っていたチャラ男会計がびっくりした表情で俺に尋ねた。
つーちゃん?と一瞬心の中で首を傾げたけど、すぐに書記の名前が嗣巳だったことを思い出した。
「え?……まぁ、はい」
あんなの、ちゃんと聞けば分かるだろ。もしかして金持ちは気が短いから人が喋るのも待てないのか?
俺が困惑しながら答えると、何かが物凄い勢いで突撃してきた。
「ぅ、」
苦しい。
突然で驚いたけど、この正体はでっかいワンコ、もとい書記の柊嗣巳先輩だ。
「あの…離れて貰えませんか?」
「や」
え、何この人……可愛いんだけど。
俺よりも一回りくらい大きな体格をしているはずなのに、俺を抱きしめながら頭をグリグリと押し付けてくる様子に不覚にも胸がときめいた。
「おれ…い、てる…と、わか る…?」
「分かりますよ?」
「う、れし…!」
うん、これはあれだな。ご主人様にくっついて離れない大型犬だ。
ピンと立った耳と、ブンブン激しく動くしっぽが見える。
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