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真っ先にある人の顔が頭に浮かんだ。
しかし今は——僕の話はいい。
「つまりお姉様とあなたはそういう関係——」
「断ち切りたい。あの女は毒蛇みたいに長いこと俺を縛り付けてる」
指先にかかる吐息が熱い。
「この前君に会った時——突然俺に言ったろ『あの女じゃなく自分の方につけ』と……」
冴木は僕の髪をクシャリと撫でる。
「神の啓示かと思った?」
「いや。新たな悪魔が登場したと思った」
流されやすい男なんだ。
だからあんな悪女にコロリと騙された。
「だけどこっちの悪魔の方が可愛いと思った。そうでしょ?」
僕は酔いと陶酔で潤んだ冴木の瞳を真っ直ぐ見つめて言った。
「計画があるんだ」
「何?」
「近々屋敷で大事なパーティーがあるの——その場で魔女裁判を開きたい」
「魔女裁判だって?」
「そんな顔しないで」
固い表所をほぐしてやるように
僕は満面の笑みで冴木の頬に触れ猫撫で声で告げる。
「君は刑事として当然のことをすればいいだけなんだから」
「……つまり?」
「その場で天宮貴恵を逮捕して。容疑はこの僕に対する殺人未遂だ」
想像しただけで悪戯な笑みが込み上げてきて震えた。
だから——。
「もちろん、上手くいったら僕はあなたに報酬を払うよ」
美しい刑事の薄い唇を遊び半分啄ばんで囁く。
「これ以上の——もっと素敵なの」
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