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ぼくは、おにいちゃんとふたりきょうだいだ。
おにいちゃんは、ぼくにねこをたしたくらい、ぼくよりせがたかい。
ぼくはおもう。いったい、よのなかなんてふこうへいだって。
だってひどいんだ。ぼくがテレビのリモコンでチャンネルをかえていると、おにいちゃんはすぐにぼくからリモコンをとりあげて、じぶんのすきなばんぐみにかえてしまうんだから。
ママは、もっとつよい。そんなおにいちゃんからリモコンをとりあげて、
「けんかするなら、ふたりともみちゃだめ!」
っていって、おにいちゃんがしゅんとする。
そのうちにママがみかんをもってきて、ぼくとおにいちゃんにくれた。
ぼくはみかんがだいすきだから、すぐにかわをむいたよ。
あーあ、からだがおおきければ、ぼくだっておにいちゃんやママみたいに、つよくなれるのになあ……。
そうつぶやいたら、みかんのかわのウラからへんなやつがとびだしてきた。
そいつはぼくのこゆびよりちいさくて、めがまんまるで、しろくて、ちょっとふとってた。
「いていて、やあ、ひどいめにあった。あのハチがブンブンうるさいから、はなのなかにかくれていたら、はながいつのまにかみかんになっちゃって。でられなくなっちゃってさ。きみがたすけてくれたんだね、ありがとう」
「きみ、じゃないよ。ぼくはまーちゃん。ねえ、きみはひょっとしてこびとさん?」
「ぼく? ぼくはこうみえてもまほうつかいさ。まーちゃん、たすけてくれたおれいにきみのねがいをかなえてあげる。なんでもきくから、いってみて」
「ほんとう!?」
「ほんとうだよ、さあ、どうぞ」
もちろんぼくは、おにいちゃんより、ママよりおおきくなりたいんだって、おねがいをしたよ。
「おやすいごようさ」
ふとっちょのまほうつかいがくるりん、とまわると、ぼくはずんずん、おおきくなって、こうこうせいくらいのおにいちゃんになっていた。
「わあー! まーちゃんが、まーちゃんが……」
おにいちゃんがびっくりしたこえをだして、ぼくをみあげてる。
あれ? おにいちゃんて、こんなにちいさかったっけ。
「まーちゃん、わるいものでもたべたの!?」
たちあがったママも、ぼくからねこをひいたくらい、ちいさくなっていた。
ぼくはたのしくなって、ふるえてるおにいちゃんのてからリモコンをとりあげた。
そして、すきなばんぐみをみた。おにいちゃんもママも、なにもいわなかったんだよ。うふふふ!
おひるごろになって、ママが、ふたりですぐちかくのスーパーからしょくパンをかってきてねといった。ひとり100えんまでならおかしをかってもいいって。
かいものは、じつにじゅんちょうだった。
きんじょのおばさんが、こっちをみてきたけど、ぼくをまーちゃんだとはきがつかないみたいだった。
「あら、しんせきのおにいちゃんとおつかい? いいわね」
って、おばさんはおにいちゃんにむかって、そういった。
おにいちゃんは、うん、とも、ちがうともいわないで、ちいさくなってたよ。うふふ!
でもかえりみちで、くびわのない、みたこともないおおきいいぬが、うーっ、うーって、ぼくにほえてきた。いぬはだいすきなんだけど、そいつはこわくって、ぼくはふるえた。
それに、ぼくのもっていたふくろにくいついて、パンをたべちゃったんだ。
ぼくはこわくて、かなしくって、ないた。
すると、おにいちゃんが、
「なかないで、まーちゃん。このこ、きっとおなかがすいてたんだよ。ママにはおにいちゃんがいうから、だいじょうぶ」
って。そうしたら、ぼくはいぬがあまりこわくなくなった。
「きみのいえはどこ? はぐれちゃったの?」
おにいちゃんがいうと、いぬもなきやんで、おにいちゃんのてをペロペロってしたよ。
おにいちゃん、ぼくよりとってもちいさいのに、なんでだろう。ぼくよりどうして、強いんだろう。……
それから、ゆうがたになって、ママがごはんをつくっていると、こんどはゆかがグラグラってしたんだ。じしんだ!
ぼくもおにいちゃんもこわくなって、ママにくっついた。
ママは、ぼくよりねこひとつぶんもちいさいのに、だいじょうぶよ、とわらってぼくたちのせなかをさすってる。
どうしてだろう? ぼくのほうが、おおきいのになあ。
でも、ぼくはきづいたんだ。わらってるママのても、すこしふるえてるってことに……。
するとこんどは、むこうのへやから、ぼくよりもっとおおきなパパがとんできて、ぼくたち3にんをまとめて、ぎゅっとした。
すごくすごくあたたかくて、ゆれてもちっともこわくなくなったよ。
すぐにじしんはやんで、ぼくたちはうふふってわらって、パパがくすぐってきた。
ぼくは、こころのなかでまほうつかいにいったよ。
もうまほうはいらないよ、もとにもどしてねって。
おおきいからつよいじゃなくって、つよいからいいんじゃなくって、ぼくは、4にんでいるからうれしいんだって、おもうから。
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