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「───はい、どうぞ。林檎とお菓子も食べられそうなら食べてみてね」
見られていては食べにくいかもしれないと思い、杜羽菜は獣から離れテーブルに自分の夕飯を並べた。
「私もこれから夕ご飯なの。ススを使ったスープと卵焼き。あ、卵焼き食べる?」
獣は「いらない」とでも言うように、プイと顔を逸らした。
───しばらくそっとしておこう。
「いただきまーす」
杜羽菜は見て見ぬふりをしながら自分の食事をはじめた。
そんな杜羽菜を獣もときどきチラ見をしながら、ゆっくりと杜羽菜の用意した食べ物へと顔を近付けた。
(……あ、ミルク飲んでる)
続いて林檎を食べ始めた様子に杜羽菜はホッとした。
───よかった。食欲はあるみたいね。
獣は怪我の足を庇うように立ちながら林檎を食べ終えると、クッキーとマドレーヌをじぃっと見つめた。
(お菓子も食べてくれたら嬉しいんだけど)
獣はしばらく眺めていたが、そっと口を近付けると最初はペロペロと舐め、そのうちパクパクと食べ始め、最後はお皿を舐めて一粒も残さず綺麗に食べ終えた。
───うふふ。良かった、気に入ってくれたみたい。
杜羽菜はこっそりと微笑んだ。
獣は杜羽菜を見ることなく毛布の上に丸くなった。
どうやら再び眠ったようだ。
杜羽菜がお皿を片付けようと近寄っても、獣が目を覚ます様子はなかった。
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