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1.あたしはあたし
何で空は青いんやろ。
何で雲は白いんやろ。
五時間目の体育が終わって、水とうのお茶を飲んでいる。
日かげにはいっても、全然すずしくない。
ここのところ猛暑ばかりで、水分をとらないと、すぐに熱中症になってしまう。
空はこれでもかっていうくらい青くて、太陽もぎらぎらしている。
「こんなに暑いのに、何で夏休み終わってるんやって」
メグちゃんが言い出したら、となりの果林ちゃんも言い出した。
「まだ八月やよ。だいたい授業って、ふつう九月始まりやん」
「うんうん。どこかで今の今、昼寝してる小学四年生がいるって、ズルいと思う」
ああそうか。ママが言っていた。三学期制のところは、九月から二学期がはじまる。でも、うちらは二学期制やから夏休みが早く終わって、代わりに秋休みがあるんやって。
「ののちゃんもそう思わん?」
「え?」
いきなり話をふられてとまどう。
「あ、また話聞いてなかったな」
メグちゃんが、ぷくっとほっぺたをふくらます。
「聞いてたよー。まだ暑いのに、何で夏休み終わってるんやって話でしょ」
「いいやん。ののちゃん、何見てたん?」
果林ちゃんが聞いてくれる。
「飛行機雲見てた」
二人とも、何や飛行機雲か、と言いながら立ち上がった。
空を見上げながら、あたしはもう一回、お茶を飲む。ゴクリと音がして、のどを冷たいかたまりが通っていく。
見ていると、飛行機雲はずっと同じ長さだけで、先に出ていたところはどんどん消えていく。 長く線になってのびる時と、今日みたいな時がある。
何がちがうんやろ。
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