果て無き宇宙へ

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果て無き宇宙へ

20XX年、人類は宇宙時代に突入していた。月、火星への移住を成し遂げ、今や地球は三つあるとされている。そんな人類でも、太陽系外進出は未だになされないでいた。 行く技術はある。だが、これ以上先に行っても意味がないしカネがかかるだけじゃないかと声高らかに言う者が三つの地球には多いためにこれ以上の宇宙開発はされないのである。 だが、外宇宙に対する憧れを持つものは少なからず居る。彼らは太陽系外進出プロジェクトを削りに削りきられた予算から何とか立ち上げたのだった。 まず、外宇宙探査ロケットに人を乗せようとしたのだが、外宇宙探査に出すと言うことは言わば鉄砲玉、二度と地球に帰還出来ないことを意味する。人道的な面で却下された。 そこで考えられたのがロケットにAIを埋め込むことである。AIであれば人道的な問題は全てクリア出来るし、デブリの回避にも長けており、正確に地球に信号を送ることにも長けている。何より、食料が不要だと言うことが大きい。 AIの食料とは言えば…… 電気である。その問題はロケットに取り付けた太陽帆船(ソーラーセイル)で受けた太陽風(ヘリオポーズ)を機内の電気に変換する既存技術があるために問題はない。ロケットを打ち上げた後、太陽風に乗せることで宇宙気流に乗せた後は鉄砲玉のように何処までも宇宙を行けることが分かったのだ。人を乗せずにAIを完全に捨てるつもりだからこそ出来る方法である。 そのAIだが、高性能なものが選ばれた。現在の科学力で最高のAI、ウルトラスーパーミラクルハイパーAIが選ばれた。小学生が冗談で決めたような名前だが、性能は折り紙付きだ。ロボットにヒトと同じような完全直立二足歩行を成し遂げさせ、ヒトとの会話も感情に応じたものを可能にした、何よりも大きいのはスーパーコンピューターでも出来ないような「応用」が出来ることである。機械の大容量記憶装置を持ちながら人間の脳と同じ性能を持ち、感情を持っているとまで評された最高のAIである。 ロケットにAIが搭載された。そのAIから信号を受ける宇宙開発者は名前が無いのも寂しいと思ったので、それに名前をつけることにした。 何にしようか。宇宙開発者は頭を捻って考えた。 「お前は太陽風で動くからな。太陽に関係する名前にしよう。アポロンなどどうだ」 「女タラシ男タラシノ、名前ナドツケラレタクアリマセン。拒否シマス」 流石は感情を持つとされているAI、ああ言えばこう言う。こういうところが可愛いのだがな。宇宙開発者はため息を吐いた。 「ヘリオスなどはどうだ?」 「太陽ソノモノノ名前ハ私ナドニハ荷ガ重スギマス。拒否シマス」 偏屈なAIだ。それに何かと自分を謙った思考パターンの奴を入れてしまったようだ。宇宙開発者は軽く舌打ちをする。 「パエトンなんかどうだ?」 「アア、ヘリオスノ息子デスネ。自己顕示欲デ太陽ノ馬車ヲ暴走サセテ、祖父ゼウスニ雷デ撃チ落トサレタ」 無駄にギリシャ神話に詳しい奴だ。流石にこんなに縁起の悪い名前をつけられる程ドMでは無いだろう。 「イイ名前デスネ。外宇宙ノ旅ハ言ワバ鉄砲玉ノ自殺行為、言ワバ貴方方ノ自己満足ノ為ニ宇宙ニ放リ出サレル私ノ名前ニ相応シイ、私ノ名前ハ『パエトン』デ結構デス」 確かにその通りだが…… ハッキリ言うことは無いだろう。面倒くさいAIを選んでしまったものだ。宇宙開発者は頭を抱えた。
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