始まりのお話 出会いは些細なきっかけだった

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 それはいつものような日常のなかで起きた。  介護施設での夜勤明けでなんとなく寝る気にもならず眠気覚ましに外を散歩していたら、歩道の真ん中に何か落ちていた。  周りは気に止めない様子で通りすぎるなか、私は何故かそれを拾い上げる  よく見れば、定期券で一応周りを見渡してみるも定期券を探しているような人物は見当たらず、ため息を溢しながら、ある場所に向かった。 「……あの、これ向かいの歩道に落ちていたんですが……」  最寄りの交番に拾った定期券を届けに行くと奥から警察官が出てきて、それじゃと簡単にいくつか質問されて、ある項目で悩んだ。 「所有者が現れた場合にその方に個人情報をお伝えしてもよろしいですか?」  いつもなら断っているだろう。でもこの時は、ちゃんと定期券が渡ったことを確認したいなと思ってしまい、相手が聞かれた場合には伝えても良いと答え、しばらくして書類を渡された。
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