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一杯目を飲み終えると、志貴はおもむろに立ち上がった。
「つまみ、足りなかった?」
飲んでて味気ないと思うと、志貴は自分でちょっとしたおつまみを作り始めるから、今日もそうかと思い聞いてみる。
「いや、違う。ちょっと待ってろ、葉月」
なんだろう。
志貴はすぐに戻ってきた。見慣れない紙袋を提げて。
「葉月サンタにもクリスマスプレゼント」
芝居っ気たっぷりに言って、志貴は私に小ぶりの紙袋を渡す。
「え、私、何にも用意してないよ…」
「いいよ。それより開けてみ?」
かなり小さな箱が出てくる。この大きさだとアクセサリぽいな。
中味を推理しながら、私は箱を開けた。
中から出てきたのは、ピアスだった。シルバーの爪に鮮やかなグリーンの石が光る。シンプルなスタッドピアスだから、仕事場でも使えそう。
「ブルーの石と迷ったけど、クリスマスっぽくグリーンにした。言っとくけど、本物エメラルド」
ふふんと、ドヤ顔で志貴が言う。
「え、そんな金何処から…」
私が子どもたちのクリスマスプレゼントの費用の工面に、苦労したのに。思わず言ってしまうと、志貴は露骨にがっかりした顔をした。
「いや実は…会社の忘年会で商品券当てたんだ。お前に言わなかったのは悪かったけど…。つか、ちょっとはカッコつけさせろよ!」
貰った商品券で買ったプレゼント、ってのは暴露したくなかったのか。ええかっこしいの志貴らしい。
恋人同士ならともかく、10年以上も家族やってて、子どもも4人もいて、そんなとこで見栄張る必要ある?
男のプライドなのかもしれないけど。
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