真田心中

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「カイ…」 「ありがとう。 伊咲を励ますつもりで呼んだのに、 なんだか僕が元気付けられてしまったね」 「そんなこと…。 こちらこそ、気遣ってくれてありがとう」 「ーーーあと何日か後、幸村様が戻って来たら 幸村様や昌幸様達の判断をもって、甚八は裁かれる。 伊咲はそれにすべて任せていればいいよ。 だから今日はもう、部屋に戻ってゆっくり休みな」 「…分かった」 甚八の身体から毒が抜け切り、回復に向かっていた頃に 幸村は大坂から急ぎ足で戻ってきた。 そして、その横には新しい妻ーーー利世を伴わせていた。 品良く、垢抜けた美しさを持つ利世は、 庶民的で人懐こさが魅力のお梅とは また違った魅力に満ちた雰囲気の女性だった。 利世は初めて会う真田十勇士たちに丁寧にお辞儀をすると、 幸村と共に、お梅の遺体が安置されている部屋へと向かった。 幸村の留守中、勝手に遺体を埋めてしまうのは忍びなく思った家臣達が なるべく涼しい部屋に寝かせていたものの、 お梅の容姿は土気色を帯びた、かつての美しさを失った姿でそこにあった。 「…お梅…っ!」 幸村がお梅の前に正座し、肩を震わせていると、 「父上…?」 という、か細い少女の声が聞こえ 部屋の中にお菊が入ってきた。
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