終息

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終息

********  夜刀は、自分の従姉であり義姉でもある光を目の前にして言葉を失うほど驚いていた。まさか、こんな田舎町で光と再会するなんて夢にも思っていなかったのだ。 しかし、光は夜刀に再会出来たことがとても嬉しかったようで、瞳にはうっすらと涙を浮かべて微笑すると、夜刀を優しくハグしていた。 「やっと見つけた。黙って夜刀がいなくなってから、2年やで! 少しはどこで無事に生きてるか位は、連絡くれてもええんとちゃうん?」 「あ、ああ……ごめん。光…」 「たまたま、この街の警察関係の知り合いに真澄さんが相談されて、色々調べてるうちに八重さんにたどり着いたから、ここへ来ることが出来たんよ!」  光が夜刀の目を真っ直ぐ見つめて嬉しそうに事の次第を話している間、夜刀は背後にずっとジリジリと刺されるような嫌な視線を感じていた。 「光さん!! いつまで私以外の男の手を握りしめているんですか!? 夜刀も早く私の光さんから離れなさい!」 「真澄さん! また、そんなことを恥ずかしげもなく……夜刀、気にせんときや!」 「やっぱ、真澄もいるわけだ……」  光を溺愛する夜刀の異母兄弟の兄の真澄が嫉妬の炎をメラメラと二人の背後で燃やしていたようだが、光は慣れた様子で夜刀に気にするなと笑うと、夜刀の存在を再度確認するかのように……もう一度優しくハグしていた。 ********  その後、泉が目を覚ましてどんな様子だったかは大体想像がつくだろう。  いきなり知らない女性に抱きつかれ、自分の今回の働きを誉めちぎられたあげくに遠い親戚だが、これからもよろしくとニッコリ笑って握手を求められた泉は、何が何だか理解するのに戸惑い…大きな瞳をぱちくりさせていた。 「それにしても、泉さんは光さんと良く似ていますね。目元が特にそっくりだし、声も瓜二つで驚きました!」 「私もびっくりしたわ! 生き別れた妹がおるんかと思って、母さんに写メ送ってしもたもん!」 全てが終息して、光と真澄は八重の家に招かれて美味しい夕食をご馳走になりながら、泉たちと楽しく談笑している所だった。 「私も驚きました。夜刀からは、聞いていたけど……ほんとに、血の繋がった姉さんじゃないかと私も疑いました!」 「まあ、血は繋がってるんだけどな!(笑)」 「それにしても、こんな所にお祖母ちゃんの妹の八重さんがおったやなんて、ちっとも知りませんでした」  光がそう言って八重に嬉しそうに笑いかけると、八重もまた嬉しそうにニッコリ笑って目を細めていた。 ********  八重は泉のほうを見つめながら光に居所を伏せていたのは、全て泉の母が望んだことだからなのだと事情を説明していた。 「そうやったんやね。泉ちゃんのお母さんは、泉ちゃんに普通に暮らして欲しかったんやね。そらそうやわ……」 「でも、私……嫌じゃなかったです。お婆さんがナツさんがありがとうって光の向こうへ消えて行ったのを見て、感動しちゃったんです……(笑)」 「あーあ、これは夜刀の責任やわ!」 「えっ!? 何でそうなる?」  泉と話しながら、責めるような目で光に見つめられた夜刀は、どうして自分が責められているのかがわからなくて目を丸くしていた。 「そやから、責任取って泉ちゃんのこれからの指導とガードを夜刀がするいうことで……良いですか? 八重さん?」 「そうしてもらえると、有り難いね。娘にも言い訳になるし、助かるよ!」 「おい! 何で勝手に二人で決めてんだよ~!」 「お前に拒否権はないらしいな!(笑)」 こうして、夜刀の意思は無視されたまま、光と八重の独断で夜刀は泉の指導とガードをすることに決まったようだ。 ********  月に一度は泉の様子を報告するようにと、半ば強引に光に約束させられて夜刀はしばらくの間、泉の元に留まることに決まった。 「何か光さんて凄いね。とってもパワフルだったわ!」 「もともとタフだったのが、パワーアップしてやがった……(笑)」  泉は、夜刀に…光のことが、好きなんだろうと言いかけて止めておいた。それは、聞いてはいけないことのような気がして、なんとなくまだ大人になりきれない泉にも、夜刀の気持ちを察することが出来たからだ。 ****  そして、夏休みも終わりに近付き、泉たちは夜刀も交えて花火をして夏の終わりを惜しんでいた。脱け殻のようになっていた雷太も原西もナツが浄化されたことによって、元通り元気な姿に戻っていた。 「泉と夜刀さんに感謝だね♪」 「ほんと、ほんと!! 泉、めっちゃカッコ良かったんだからね!」 「佐野さん、夜刀さん、ありがとう!」 5人から、改めてお礼を言われて泉も夜刀も照れ臭くて苦笑していた。 「でも、ほんとに夜刀が助けてくれて良かったよ! ありがとね、夜刀♪」 「ああ……こっちこそ…ありがとう。泉のお陰でまた、光と普通に話せる気がする」 「どうして?」 「んなことは、お前は知らなくて良いんだよ!(笑)」  夜刀は、照れ臭そうに笑うと…大きな満月が映し出された夜の海を見つめながら、そっと泉の肩を抱きしめていた。       【End】
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